生徒22名と教員3名が乗り合わせたスクールバスに白バイが衝突、バスは止まっていたという多数の証言があるに もかかわらず 「バスは5〜10キロで走行中に白バイをはね、隊員を死亡させた」としてバスの運転手には1年4ヶ月の実刑判決 が下された。 バスが急ブレーキを掛けたという証拠のスリップ痕は警察により捏造されたという疑いが濃厚である。

1) 事故の発生

平成18年3月3日午後2時半ごろ、吾川郡春野町弘岡中の国道56号で、 県警交通機動隊の巡査長(26)= 高知市布師田=が運転する白バイと道路左側のレストラン駐車場から土佐市方向に右折しようとしていた仁淀中学校のスクールバスが衝突。巡査長は約1時間後に高知市内の病院で胸部 大動脈破裂で死亡した。

スクールバスには遠足帰りの仁淀中学校3年生22人と教員3人が乗っていた。生徒らにはけがはなかった。

2) 緊急逮捕

土佐署はバスを運転していた運転手(52)を業務上過失傷害の疑いで現行犯逮捕し、容疑を同致死に切り替えて 調べをおこなった。バスが安全確認を怠って車道に急に飛び出したため白バイが避けきれなかったというものだっ た。同署は高知県警に身柄送検せず2日後の3月5日昼前頃に釈放。詳しく

3) 行政処分を受ける

平成18年7月28日「横断等禁止違反及び重大な過失による死亡事故」であるとして減点22点の免許取り消し 処分が下される。 平成18年7月30日仁淀町小中学校父兄有志が発起人となり処分の軽減を求める約750名の嘆願書を担当検事に提出。

4) 業務上過失致死罪で起訴

事故から9ヵ月後の平成18年12月6日、高知地検は片岡被告を業務上過失致死罪で在宅起訴した。

検事に呼び出されて見せられた写真には、道路に黒い筋が二本ついていた。「これは何の写真ですか」と片岡 被告が聞くと、「お前が白バイを引きずった時のスリップ痕だ」と言われる。仰天する片岡被告。

「私は、これはおかしいと思ったんです。こんなものがつくには、私が余程加速して道に飛び出し、急ブレー キでも掛けなければ無理。実際は向こうがバスに突っ込んできたわけですから、なぜそんな痕がつくのか、私に は分かりませんでした」

それは黒々としたインクで塗ったかのようなはっきりした“スリップ痕”だったのである。

※週間新潮2008年2月28日号より

5) 高知地裁での公判開始

平成19年1月18日開廷

【弁護側主張】バスは車道に入る前、一旦停止し十分右方向の安全を確認した。白バイは見えていなかった。ゆっ くりと中央分離帯付近まで進み、対向車線の安全確認のため一旦停止中に白バイが高速で衝突してきた。裁判の証人 はバスに乗り合わせた教職員と衝突の瞬間を目の前で目撃した校長先生。そして、白バイの間近を走っていた第三者。詳しく

【検察側主張】バスは車道にはいる前に一旦停止したが、右方向を一瞥しただけで安全であると軽信し、時速 5〜10km/hで6.5メートル進んだ地点で60km/hで通常走行中の白バイを跳ね、急ブレーキを踏んだ。 バスは白バイを2.9メートル引きずりながら停止した。衝突の瞬間白バイ隊員は3.9メートル東方向にはね飛ば された。バスに重大な過失がある。証人はバスの速度と衝突した白バイの速度を同時に目視した同僚の白バイ隊員。 スリップ痕の長さ、バスの損傷の程度などからバスの速度、白バイの速度などを算定した科捜研技師。実況見分にあ たった警察官。

平成19年6月7日、6回の公判を経て被告人に禁固1年8ヶ月の実刑判決がくだされる。 同日、被告側は控訴。

事故を目の前で目撃し、公判で証言した仁淀中学校の品原校長に対し検事はこう言い放った『事故当時は遠足の帰 りで校長としての責任を回避するため虚偽の証言をする動機は十分にある』

校長はこう憤る。

「この裁判は人をバカにしていると思っています」

「目の前の出来事ですから、私はバスが動いてなかったことを明確に証言しました。しかし、裁判では“信用 できない” の一言で片付けられてしまいました。バスは国道に出るとき、一旦停止し、それから右折するために中央分離帯のあたり までゆっくり出て行きました。私の車はその後ろに続き、国道の歩道あたりで一時停止していたんです。車の交 通量が 多くてバスはなかなか右折できず、私は自分の車のサイドブレーキを引きました。そうしたら、何か白いものが ギューンという感じで来たと思ったら、“ドーン”とすごい音がしたんです。物凄いスピードでした。警察や検 察は スリップ痕があるからバスが動いていたといいますが、事実は私が法廷で証言した通りなんです。」
「検事が私にスリップ痕の写った写真を見せながら、“これ何だと思う?何だか分からんか”と詰問するんで す。 私は“あの状況でこんなスリップ痕ができるわけがない”と言ったら、検事は“常識で分かるだろう”と言いました。だから、 私は“ちょっと待ってください。バスは動いていませんでした。だから、そんなスリップ痕ができるかできない か、常識 で分かるでしょう”と言い返しました。乗っていた先生や生徒の中にだって、バスが急ブレーキを踏んだなんて、誰も言って いない。判決を聞いた時は、信じられない、の一言でした。」

※週間新潮2月28日号より

6) 隊員遺族による1.5億円の民事訴訟

平成19年6月14日 『安全確認が不十分なまま国道に右折進入し、横から来た白バイと衝突、隊員を死亡させた』という地裁判決を受けて、遺族は片岡氏 とバスを所有する同町を相手に、隊員が受け取るはずだった給与などの逸失利益と慰謝料を支払え、として高知地裁 に民事訴訟を起こす。

7) 高松高裁の控訴審

平成19年10月4日 控訴審開廷。検察側の主張する事故形態には偽装を疑わせる多くの矛盾点があり、それを証明するため弁護側は実証実験結果、鑑定 書、新たな証人などを証拠申請。しかし、審理を行うことなくわずか30分で結審、高松高裁・柴田秀樹裁判官は 『一審で審理は尽くされている』 と一審の実刑判決を支持し平成19年10月30日控訴棄却の判決をくだす。

8) 最高裁に上告

即日、弁護側は最高裁に上告。最高裁に対して十分な審議を求める署名活動もはじまり、 雑誌、テレビ報道などで世論の関心を集め街頭署名27461名 インターネット署名20667名 計48128名の署名が集ま る。

9) 片岡氏県警を告訴

平成20年3月6日 スリップ痕は捏造されたものとして高知地検に被告訴人不詳で刑事告訴する。片岡氏は会見でこう話している。 『いつ判決が下りるかと、針のむしろの上にいるよな毎日が続いている。私としては、今までの裁判のなかで、あの ような、ありもしないスリップ痕が重要な証拠として取り上げられていることは納得できない。』

10) 民事訴訟和解

平成20年6月20日 遺族の起こした民事裁判に対して片岡氏は「民事裁判を通して事故の真実を明らかにしたい」と事実関係を争う姿勢を見せるが、遺族 側は片岡氏に対する 訴訟を取り下げ、仁淀川町と和解、賠償金額一億円を受け取る。

11) 最高裁控訴棄却

平成20年8月20日 上告棄却の決定が下される。

12) 県警不起訴

平成20年9月11日 スリップ痕は何者かによって捏造されたものとして県警に対しておこなっていた告訴を高知地検は「嫌疑なし」として不起訴処分とす る。片岡氏側は検察審査会に審査申立。

13) 高知刑務所に収監

平成20年10月23日、片岡氏は高知地検に収監のために出頭する。現在、加古川交通刑務所に服役中である。

14) 検察審査会「不起訴不当」の議決

平成21年1月29日 スリップ痕は捏造されたものとして証拠隠滅容疑で被疑者不詳のまま出した告訴を同地検が不起訴処分としたことについて、高知検察 審査会は29日までに、不起訴処分を不当と議決した。

15) 高知地検、県警を再び不起訴とする。

平成21年2月23日、高知地検は高知検察審査会が不起訴不当を議決した、バスのスリップ痕が捏造されたとす る運転手(55)の告訴を再び嫌疑なしで不起訴とした。  高知地検小野正弘次席検事は「審査会の指摘を踏まえ、再捜査した。スリップ痕はバスが急ブレーキを踏んででき たもので、偽造を認める証拠はない」と述べた。

16) 片岡氏、国家賠償訴訟を提起

平成21年3月3日、片岡夫妻は高知県警に対し、1000万円の損害賠償を求める国賠訴訟を提訴した。

17) 片岡氏、刑期を終える。

平成22年2月23日、満期の1年4ヶ月間収監されていた加古川交通刑務所から帰還する。

18) 再審請求提出。

平成22年10月18日、再審請求提出。